過疎化が進む木城町中之又に新築の家が建った。町によると、中之又での新築は61年ぶり。板谷地区の会社員中嶽和弘さん(59)宅で木造平屋建て112平方メートル。1人暮らしながら、大きな家にしたのは身内や知人らに自由に泊まってもらい、中之又の魅力を感じてほしいから。中嶽さんは人々を招く温かい場所になることを願っている。
中嶽さんは高校進学を機に中之又を離れた。東京の建設会社などで働いたが、50歳の時、帰郷。共に暮らした父・忠男さんは2019年、88歳で亡くなった。忠男さんは短期山村留学生を受け入れていたという。
21年4月、自宅などを焼失する火事に見舞われた。3人きょうだいで唯一、中之又で暮らす中嶽さんは再建を決意。新築に当たり、忠男さんが約50年前、次代のためと近くの山に植えた杉を使った。「私たちがいなくなっても子どもが使えるように」と都農町に住む姉・黒木光代さん(61)夫婦がキッチンや風呂、トイレなどを支援した。
玄関から入ると、以前の家にもあった土間があり、薪ストーブを備える。広いダイニングキッチンや客間、和室などが配置。窓を開けると、そばを流れる板谷川のせせらぎが聞こえ、季節になると無数のホタルを観賞できる。
新築祝いは4月に旧中之又小であり、親戚ら約50人が集まった。新しい家には消防団と中嶽さんが勤める林業会社、中之又の交流人口増加に向け視察で訪れた地域総合整備財団(ふるさと財団、東京)関係者の2組が宿泊した。
現在、板谷地区に住むのは中嶽さんを含め4戸9人。中嶽さんは「ここに泊まった人が次の人を呼ぶ。そんな風に輪が広がっていけば」と話している。
【写真】中嶽和弘さんの新居。近くを板谷川が流れる