高千穂町の高千穂あまてらす鉄道(高山文彦社長)は、旧高千穂鉄道で走らせるトロッコ列車「グランド・スーパーカート」の燃料を軽油からバイオディーゼルに転換し、1日から本格運行を始める。天ぷら油や、豚骨ラーメンのスープから抽出したラードなどの廃食用油を原料にしており、温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル社会の実現を目指す。
トロッコ列車は、高千穂鉄橋の上から雄大な山々や美しい棚田、渓谷などの景色を楽しむことができる人気の観光メニュー。同社はそうした自然環境を守っていくために、「地方の小さな企業に何かできることはないか」と検討を重ねてきた。
福岡県内でバイオディーゼルを精製している運送業者に相談したところ、協力を得られることとなり、導入に至った。使用するバイオディーゼルの原料は、主に同県内の飲食店から回収されたもので、9割が植物油、1割がラードとなっている。
試験運転は7月18日から連日実施。2両編成の車両と乗客(最大定員60人)の重量は計約18トンになるが、傾斜も難なく登り切るなどスムーズに運行できている。定期的な燃料フィルター交換が必要になるが、燃料代は軽油と同程度だという。
同社運輸施設主任の西浦大樹さん(35)は「使用感は軽油と遜色なく、むしろ走り出しの力は増したように感じる」と太鼓判。車内では中華料理店のような油の香りがほのかに漂い、「『近くに飲食店があるんですか』と乗客に聞かれることもある」と笑顔で話す。
同社は将来的に、西臼杵郡内で回収した廃食用油を燃料としてリサイクルするなど、エネルギーの地産地消を構想しており、資源循環社会に向けた地域の取り組みをけん引する考えだ。
【写真】トロッコ列車にバイオディーゼル燃料を給油するスタッフ