若手、中堅の美術家が目標の一つとする「県美術海外留学賞」の受賞に、「またとないチャンス。留学先のベルリンを拠点に、名画や現地アーティストのエネルギーに触れ、吸収したい」と決意をにじませる。
美術家への道を歩み始めたのは、美術部に所属していた都城工業高2年のとき。漠然と美大進学が頭に浮かんだ。指導者を探すことから始め、その後6年間という浪人生活や東京芸術大、同大学院在学中に多くの現代美術に触れ、画家として生きたい思いを強める。
大学院卒業後はアルバイトをしながら絵を描き、在学中に現地の学生と交流展を開くなど縁があったドイツに私費留学。語学学校に通い、10カ月間滞在した。生活に慣れるのに精いっぱいで満足に制作できず、今留学賞での再訪を決めた。
宮崎日大高芸術学科に勤務する近年、取り組んでいるテーマは「光と影」。時間の経過で変化する題材に興味を持ち、都城市美展特別賞(2013年)の「湖上にて」は、子どものころ釣りをしながら眺めた、湖面がきらきら反射する風景を思い出してイメージ化したものだ。筆を重ねる過程では、自分自身も展開を楽しみながら描いている。「輪郭を描かず、光と影が織りなす風景を表現できればいい」 芸大進学を志す教え子に対し「自分が制作する姿を見せることが大切」と、自宅の一室を改造したアトリエで帰宅後や休日に制作に励む。高校の同級生だった妻と1歳の娘を残して、3月にも単身渡欧予定。宮崎市新名爪、40歳。
(文化部・中原みなみ)