ベテランがひしめく県美術展の工芸部門で、高校生として初めて大賞を獲得した。受賞は友人からの連絡で知った。「実感の湧かない自分に代わって、母が何度もインターネットで確認していた」と照れ笑いする。
デザインを学ぶため宮崎工業高インテリア科に入学。陶芸や染色技術を身に付けると同時にデザイン部にも所属。過去には同部門奨励賞や宮日美展入選も果たしている。
授業の課題で取り組んだ今回の受賞作「命」は、沖縄県の伝統的な染色技法「紅型(びんがた)染め」という手法を用いる。背景は黄色、画面からはみ出るように配置したクジラは青と、鮮やかな配色が目を引く。
「生き生きとさせたい」という思いから、クジラの表面には数十個の花柄を描いた。花びらの輪郭には、色が付かないよう、染色前にのりを塗らなくてはならない。予想以上に手間がかかり、作業は放課後や冬休みにまで及んだ。染色には色合いの違う2種類の青を使い、さらに濃淡も付けることで、見事クジラに「命」を吹き込んだ。
作品を作る際は友人や先生と会話し、「出てきたアイデアを思い切って使ってみる」という。過去には焼き物の装飾にデコレーション用シールを貼ったことも。素材を重要視する工芸の概念から外れているように見えるが、顧問教諭を「高校生ならではの自由な発想」とうならせるほどだ。
3月には卒業し、4月からは社会人。「しばらくは仕事で忙しいだろうけど、何らかの形で作品は作っていきたい」と今後を見据える。18歳。
(文化部・成田和実)