「大学淘汰(とうた)の時代がいよいよやって来る。生き残り策を真剣に考えないといけない」。真っ先に口にしたのは、少子化で厳しさを増す大学を取り巻く環境への強い危機感だ。「本学には『食・緑・人』を教育研究理念とした専門性の高い学部が三つある。それらの個性をさらに伸ばし、差別化された小規模大学を目指したい」と決意を語る。
日向市出身。金沢大大学院薬学研究科を修了後、製薬会社勤務を経て1982(昭和57)年、南九州大講師に。専門は食品機能化学。試験管を片手に食品や成分の研究に打ち込んできた。特に、紫甘藷(かんしょ)に含まれる植物色素、アントシアニン研究の第一人者で、抗酸化作用や血糖値の低下といった効能を突き止めた。
健康栄養学部教授だった2012年には、食品健康学科から名称変更した食品開発科学科の学科長に就任。県内の高校や企業と連携してお菓子やお酒といった商品開発に取り組むなど、実践的教育の充実にも力を注いだ。
周囲からは「研究の虫」と評され、若いころは寝食を忘れて研究室にこもったことも。学長就任でその時間が削られるのが「一番つらい」と笑うが、「課題解決のため仮説を立て実証していくという過程は、研究と大学改革とで通じる部分がある。楽しみたい」と意欲を燃やす。
学生からは「てらっち」の愛称で呼ばれ、コンパ(親睦会)に呼ばれることもしばしばだったが、「それもしばらくはおあずけかな」。宮崎市佐土原町に妻(62)と大学生の長男(22)と3人暮らし。63歳。
(報道部・岩切康一朗)