明確な意思の表示や自力での移動・摂食がほとんどできない遷延性意識障害。九州初の家族会を立ち上げ、代表に就いた。4月の設立総会には患者とその家族のほか、介護、医療関係者らが予想以上に訪れ、急きょ会場の机を撤去して受け入れ人数を増やした。「関心を持っている人は多い」と力強く感じている。
妻伊佐さん(65)は2006年、くも膜下出血で同障害に。次女と介護する中、参加した全国組織の家族会で「同じ悩みを持つ人と話すことは心の大きな支えになる」と実感。24時間の介護が必要な患者の家族は遠出が難しいため、身近な組織をつくろうと決心した。
患者家族の負担を再認識した出来事がある。会発足に向けてある家族とやりとりをしていた時、「今時間が取れました」と送られてきた電子メールの受信時間が、午前3時だった。「患者も家族も、社会的な生活をすることが難しい。やはり支え合う会は必要だ」 現在の会員は26家族。総会後に「話ができて良かった」と喜ぶ患者家族の姿に、集うことの意味をあらためて感じた。中には周囲の目を気にし、閉じこもりがちな人もいる。「まずは家族間の交流を深めていく。そしてこの障害を広く知ってもらい、助け合える世の中にしていきたい」。全国会と足並みをそろえ、医療制度などの環境整備も訴えていく予定だ。
趣味は庭での野菜作り。レタスやセロリ、フダンソウなど種類はさまざまで、「毎朝作る野菜ジュースを賄うには十分」。宮崎市の自宅で家族3人暮らし。66歳。
(文化部・成田和実)