初投稿から10年目。「われながら面白い」と手応えがあった作品で、第24回茶の間賞の特選を射止めた。賞が決まる毎年秋になると、いつも以上に注意して新聞に目を通していた。「ついにやった」と受賞を喜ぶ。
特選作は、中学校に上がった長男の反抗期を描いた。あどけなさが残る息子がある日突然、「うるせえクソババア」と言い放つ。うろたえる母だったが、わが子が大人の階段を上り始めたのだと気付いた瞬間、怒りは感謝の気持ちへと変わる。読み手を温かい気持ちにさせる文章だ。
長崎県・対馬で育った少女時代。作文の授業が好きで、育ててもらった祖父母への感謝の思いを書き、よく学校代表にも選ばれた。「面と向かって言えないことも、文章なら表現できる。賞をもらって喜ばせたい思いもあった」と言う。
高校卒業後、地元で就職したが、美郷町出身の夫・繁さん(42)と出会って結婚し、25歳で本県に移住。新しい環境に早くなじもうと、地域の情報が詰まった本紙を読み始め、茶の間欄にも挑戦するようになった。
投稿は「育児日記の代わり」と言い、2人の息子の話を書くことが多い。掲載されると、近所の人やママ友から「載っていたね」などと連絡がある。地域とのつながりを感じられる瞬間だ。
家庭内の3人の男子からは、照れがあるのか「反応がほとんどない」と苦笑する。ただ、掲載作は毎回、大切にとじている。「家族ネタを書き続け、いつか澄本家の記録としてまとめたい」と語る。宮崎市新名爪。38歳。(文化部・杉田亨一)