アマ宮崎本因坊戦で21度の優勝を誇る山本淳永世本因坊の独走に待ったをかける、新たな本因坊が誕生した。「たまたま勝てた」と謙遜しながらも「21回も制覇するなんて、すごい精神力だと思う」と話すなど、相手への敬意も忘れない。
すい星のごとく現れた新王者と、山本さんの間には浅からぬ因縁がある。福岡県直方市生まれ。父の仕事の都合により中学1年で宮崎市へ転居。愛棋家だった父と祖父の影響で囲碁を始めた。高校1年時に全国高校選手権の県予選で準優勝。優勝者は今回の対戦相手・山本さんだった。
九州大2年の頃には山本さんを破り、九州学生本因坊に就位した。3年生で休学し、プロ棋士を志して試験を2度受けたものの、いずれも不合格。その後は東京で囲碁のインストラクターとなったが、体調を崩したために囲碁とは全く関係のない仕事に就いた。
囲碁から離れ十数年たった2011年、実家のある国富町に帰郷した。1年後に本紙でアマ宮崎本因坊戦の記事を目にし、一念発起。準決勝で谷村翼二名誉本因坊を破るなど快進撃を続け、最後はかつてのライバル・山本永世を3時間半にわたる長期戦の末に下した。
「囲碁は何よりも精神力が大事。急には強くならないので、修行が必要だ」。連覇に向けてさらなる精進を誓う一方、同棋戦に出場したことで山本永世ら旧友と再会し、地元にある日本棋院東諸県支部の面々など新たな仲間が得られたことを喜ぶ。「やっぱり囲碁はいいものだと、あらためて思いました」。49歳。
(文化部・黒木智洋)