波打ち際で重機がうなりを上げる中、サンドパック(巨大なポリプロピレン製の袋)に勢いよく砂が詰められていく。11月、砂浜の侵食が深刻な宮崎海岸(宮崎港北-一ツ瀬川河口)で着工した全国初の護岸工法。「ようやくここまできたか」。整然と並ぶサンドパックを前に、思わず安堵(あんど)の声を漏らした。
東京大、同大大学院で海岸工学を修め、九十九里浜(千葉県)や高知海岸(高知県)の保全計画に携わった侵食対策のプロフェッショナル。宮崎海岸との関わりはおよそ18年前にさかのぼる。
旧建設省土木研究所(茨城県つくば市)に勤務していた時、侵食対策の技術支援を行った。以降、調査や研究で度々来県。2004年からは検討委員会のメンバーとして議論を重ねてきた。
今回の事業は、地元住民も交えて工法を考えるという全国的にも珍しい手順。住民らが意見を出し合う市民談義所だけでも、09年の設置以来20回以上。「それぞれの立場が意見を交わし、『コンクリートを極力使用しない』など各工程で明確な方向性を打ち出せた」と振り返る。
近年、日本は侵食で年間160ヘクタールもの国土が失われている。その中で、サンドパックは国内の前例がない工法だけに注目が集まる。「宮崎で成功させ、ほかの地域でも有力な選択肢として示したい」と意気込む。
少年時代の夢は「天文学を究めること」。金環日食や彗星(すいせい)など天体ショーのたび、望遠鏡を手に心を躍らせる。千葉県柏市在住、奈良市出身の55歳。(報道部・佐藤友彦)