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神楽面の打ち直しを手掛ける面師 本井繁意(もとい・しげい)さん

2019年11月28日
 打ち直した面を着けた舞い手が、会場の視線と熱気を一身に浴び神楽を舞う。数百年続く地域の神事。「面に命が宿る感覚がある。何度見てもどきどきする」

 元の面を借り受けて型を取り、ヒノキなどを彫って同じ面を作る打ち直し。初めての仕事は警察官として、椎葉村の椎葉駐在所に勤務していた26年前。独学で能面を彫るといううわさを聞きつけた村民から依頼され、4集落の八つの神楽面を打ち直した。56歳で早期退職し、工房を構えた。県内で打ち直しを手掛ける面師は少ない。

 ミリ単位で再現するが、細部に気を取られすぎると迫力を欠く。「先人に負けないものを作る。300年使ってもらうぞ、という強い気持ち」で取り組み、宮崎市の大島神楽や巨田神楽、西都市の尾八重神楽の面など、これまで納めた面は40を超えた。

 県内各地の神楽保存会と交流し、打ち直しなどの相談にも乗る。ただ「地元の人にとって神楽面は神様そのもの。外への持ち出しを渋るケースも多い」という。神楽への注目度が高まり、近年は地域外のイベントなどで披露される機会も増え、傷みやすくなっている。「できるだけ多くの面を打ち、伝統継承の手伝いをしたい」

 宮崎市佐土原町西上那珂で妻(58)と2人暮らし。ゴルフや釣りに挑戦した時もあったが、「結局、面打ちに戻ってしまう」。工房のカレンダーには、仲間と鑑賞予定という県内の神楽の日程が、年末までびっしり。「一年で一番楽しみな時期。神楽のある日が待ち遠しくて仕方ない」。西都市出身。77歳。

【写真】本井繁意さん/神楽面の打ち直しを手掛ける面師

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