「重圧や緊張はないが、第1局をミスで負けて悔しい思いがあった。第2、3局は絶対にミスをしないという思いで打った」。タイトル挑戦「三度目の正直」で上り詰めた20歳の若き新本因坊が、持ち前の負けん気をのぞかせ喜びを語った。
「子守の時に遊びがてらに石を握らせた」のは、最終局を見守った祖父の谷山力(つとむ)さん(87)。アニメ「ヒカルの碁」が好きだった幼稚園時代から手ほどきを受け、小学1年で碁会所に通いだした。すぐに頭角を現し、県内の子ども大会では負け知らず。ベテランがしのぎを削るアマ宮崎本因坊戦でも富島中1、3年で本因坊決定戦に進出するなど、若いながら県内屈指の強豪として名を知られるようになった。
得意とするのはヨセ勝負。元々、苦手だったが、全国で勝てない原因がそこにあると痛感させられ変わった。終盤力を磨くため、中学、高校時代はあえて持久戦に持ち込み、とことん実戦でヨセを追究。「大会で辛抱強く戦ったことで、苦手分野が克服できた」。この不屈の精神で、今の力がある。
故郷の日向市を離れ、宮崎市で暮らす宮崎公立大2年生。大学の近くには慣れ親しんだ日本棋院宮崎支部があり「囲碁を打てるのも周りの人のおかげ。恩返しの意味で宮崎の囲碁界を盛り上げたい」と話す。同支部では、子どもの指導を買って出るなど週半分以上は滞在。「学校にいるより長いかも」と笑う。囲碁以外の趣味は読書。疲れた時は動画投稿サイト「You Tube」で気分転換する、今どきの大学生。