身元不明遺体の歯の形状や治療痕と生前のカルテを照合し、身元を特定する歯牙鑑定に20年間協力したことが評価され、九州管区警察局長から感謝状が贈られた。「これからも呼ばれればいつでも協力したい」と優しい笑顔を見せる。
日向市出身。父と祖父も歯科医で、同じ道を志したのは「必然的な流れ」だった。大学卒業後、滋賀県の医院に10年間勤務し、2000年に帰郷。当時、日向歯科医師会長だった父に県警から鑑定の依頼が来るようになり、代わりに引き受けたのが始まりだ。
鑑定に携わって間もなく、布団の上で独り息絶えた高齢女性の遺体を担当した。死後2週間の孤独死で腐敗も進んでいた。「早くご遺族の元に返してあげたいとの思いが募った」と原点を語る。
これまでに鑑定した遺体は51体と、県内随一の経験を誇る。だが、中には自殺や事件に巻き込まれた遺体、焼死体など目を覆いたくなるケースもあり、精神的負担も大きい。それでも「人のために自分にできることをやる。歯を診て名前を確定してあげる」との一心で続けてきた。
鑑定は大規模災害時の遺体の身元特定にも有効だ。南海トラフ巨大地震の発生が懸念される中、「災害時もできる限りの協力ができたら。老眼が入ってきたが、目が見える間は続けたい」と前を向く。
趣味はマラソンやゴルフ、バイクで、休日はアクティブに過ごす。日向署の目と鼻の先に「長友歯科クリニック」を構え、近くの自宅に歯科衛生士の妻(48)と愛犬のシュナウザーと暮らす。57歳。