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ATL発症抑制遺伝子の機能を解明した宮崎大医学部教授 森下和広(もりした・かずひろ)さん

2014年3月13日
 本県など南九州に多い血液のがん・成人T細胞白血病(ATL)。原因となる成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)の保有者は全国に約100万人ともいわれている。研究で患者の遺伝子を解析し、がん細胞の増殖を抑える遺伝子「NDRG2」の機能を解明、新薬開発へ道筋をつけた。「ATLは発症すると根治が難しいが、患者の不安を取り除けるといい」と笑みをこぼす。

 ATL研究に本格的に取り組んだのは2000年の本県赴任から。東京大医科学研究所や国立がんセンターなどで白血病研究に携わってきたが、九州以外でATLの症例数が少なく研究できなかった。「宮崎赴任が決まり、絶対ATLをやろうと決めた。何としても病気のメカニズムを解明しようと思った」。研究グループ十数人で、マウスを使った実証実験も4、5年間繰り返した。

 本県と同じくATL患者の多い長崎県出身。小学6年生の時に股関節に異常が起きるペルテス病を発症し、身体障害者になった。「父親から『走れないから勉強して医師になれ』と言われた。(研究で白血病になった)永井隆博士の話を聞いて育ったこともあり医師を目指した」。筑波大に進学し、研究医として血液内科の道を歩いた。

 米国の国立がん研究所や同国テネシー州のセント・ジュード小児研究病院で働いた経験もある国際派だが、「宮崎は気候が良くて住みやすい。永住しようか迷っている」ほど気に入っている。妻と2男を東京の自宅に残し、宮崎市内に1人で住む。58歳。
(報道部・佐藤暢彦)

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