機動隊、知能犯、交通事故捜査―。これだけ多くの現場に配属される警察官は珍しい。2016年から勤務する延岡署留置管理課では、「容疑者にも礼を失しないことを心掛けている」。何事にも実直に取り組む姿勢が評価され、全国優良警察職員に選ばれた。「まさか自分のような者が選ばれるとは。正直、勘弁してくださいと思った」と恐縮しきりだ。
串間市出身。幼稚園から剣道を始め、親類に警察官が多かったことから、「自然と志すようになった」。1988(昭和63)年に拝命し、翌年機動隊に配属。水難事故を想定した海中での捜索訓練などで、心身を鍛えられ、「礼儀や人を大切にする気持ちなど人間力も培った」。
一線署を渡り歩いた。高鍋署の交通企画安全係時代には1年で3件のひき逃げ死亡事故が発生。宮崎南署の刑事2課では、振り込め事件や首長の汚職などの捜査に携わった。「いろんな畑を歩いてきたおかげで、怖いものはない」と揺るぎない自信をのぞかせる。
現在の職場では留置された容疑者の表情や体調を見極めることが取り調べの貴重な材料ともなる。「面会する家族や弁護士らとも積極的にコミュニケーションを取ることで、得られる情報も多い」と語る。豊富な経験が眼力を確かなものにしている。
署内に筋トレクラブを結成。後輩たちと昼休みにトレーニングするのが楽しみ。「強い警察官を一人でも多く育てたい」。延岡市出身の妻との間に一男一女。妻の実家で義母と暮らす。55歳。
【写真】全国優良警察職員として警察庁長官賞詞を授与された榎木悌忠さん