若手農家が都内で経営改善などの成果を披露した第53回全国青年農業者会議プロジェクト発表で、稲作の作業省力化、収量向上を図る新しい苗床作りを報告。土地利用型部門で最高賞の農林水産大臣賞に輝いた。
大量に出て、再利用の道が乏しかったもみ殻を炭化させた燻炭(くんたん)を苗床の土に混ぜ、育苗箱自体の重さを25%減らすことに成功。適度な隙間ができることで根の張りが良くなり、収量も10アール当たり40キロ増えた。試験栽培に取り組み3年。「協力してくれた農家仲間や西諸県農業改良普及センター職員などいろんな方々のおかげ」
高鍋町の県立農業大学校を卒業した2008年春に就農。自宅のある小林市野尻町紙屋と、宮崎市生目で両親と3人で作業受託分を含め19ヘクタールでコメを作り、常時5万羽を飼う養鶏も手掛ける。
覚悟していたが、農作業は重労働。機械化が進んでも人の手でなければ処理できない作業は残っており、その一つが育苗箱の運搬。両親は長年の無理がたたり、腰や肩を痛めていた。「何とか負担を軽くしたい」と試行錯誤の末、約5キロあった育苗箱は約3・8キロになった。「農家が高齢化する中、このノウハウが全国に広まり、長く続けてもらうことができれば」
環太平洋連携協定(TPP)交渉など農業を取り巻く環境は激変期を迎えている。「ずっと未来のことは分からない。目の前の課題を一つ一つクリアしていくだけ」。小林市SAP会議も引っ張る。「仲間と飲みながら農業を熱く語るのが楽しい」。26歳。
(小林支局長・岩切康一朗)