ここ10年余り、ライフワークとして第2次大戦中にナチス・ドイツの迫害を逃れたユダヤ人難民の調査に取り組んできた。その集大成として、新著を出版した。
きっかけは、職場だった国の観光関連の外郭団体の上司で、旧ソ連・ウラジオストクと敦賀(福井県)を結ぶ難民船の乗員だった男性の存在だ。男性が残したアルバムにあった難民たちの足跡をたどったり、直接面会したりするうち、宮崎市出身の根井三郎(1902~92年)ら逃避行に関わった国内外の外交官の存在を知った。
難民を救った「命のビザ」で知られる外交官杉原千畝(1900~86年)は有名だが、「彼一人を英雄視するのは安直なヒロイズム。国内外の多くの外交官が関わったという実態を正しく理解すべきだ」と考える。
その裏付けとなる資料の一つが昨年4月、自身が米国で見つけた根井が難民に発給したビザの実物。「根井は『渡航証明書』も複数発行しており、なぜビザから切り替えたのかなど、謎も多い」
三重県上野市(現伊賀市)出身。在職中に赴任した韓国の女性歌人や現地の観光業界に興味を持ち、関連本も出版した。「調査と本の執筆が退職後の趣味になった」と語る。
外国人誘客に長年携わり、リゾート開発に取り組んだ本県の故・松形祐堯元知事とも面識があるなど、本県との縁は深い。
国内外で難民に関する講演を行う機会も多く、「コロナが落ち着いたら、根井三郎の地元で大いに語りたい」。東京都中野区で妻、次男と3人で暮らす。76歳。