宮日総合美術展と県美術展を統合した新公募展「第1回みやざき総合美術展」で、全7部門の最高賞に当たる開催記念グランプリ「文化コーポレーション賞」に輝いた。「まずは作品として仕上げられたという安堵(あんど)感でいっぱいだった。結果として評価されて驚いた」。落ち着いた表情の中に充実感をにじませる。 受賞作の油彩「まなざし」のモチーフは、亡くなった父が約50年前に撮影した母と妹の写真。アルバムを見るたび「日常の風景の中に、親子の絆や美しさがある」と心引かれた。いつか作品にして「視線を送る父の気持ちを味わいたい」と考え、2019年夏から制作を始めた。 一見、白や黒、グレーの無彩色で描いたようだが、画面の奥にはオレンジや緑といった鮮やかな配色がある。絵の具の重なりで、単純なモノクロと割り切れない世界観を生み出した。「穏やかな表情や空気感、光を際立たせたかった」ことから、洋服の細部などはあえて省略。意図は審査員に伝わり「絵画的な要素を引き出し、作り直している」と高く評価された。 金沢美術工芸大、同大学院で彫刻を学び、宮日美展彫刻部門で特選を受けた。中学校教諭を経て、高校美術教諭になった頃から平面作品にも取り組み、具象絵画の公募展出品は今回が初めて。「受賞には周りの方が驚いていた」と笑う。現在は宮崎大宮高で教壇に立ち「形式にとらわれず、自分なりの表現を追究していきたい」と抱負を語る。高鍋町内で妻、次男と暮らす。59歳。