暴力団が民事紛争に介入する民事介入暴力、通称ミンボーの県内の草分け的存在。県内最高齢の90歳の現役弁護士で、県史に残る事件や裁判を担当した歴史の証人でもある。
小林市出身、中央大法学部を卒業。1963(昭和38)年、司法試験に合格した。81(同56)年に県弁護士会民事介入暴力対策委員会の初代委員長に就任すると、「黙っていたら暴力団の思うつぼ」と先陣を切って対策に当たった。
93年の暴力団による宅地の削り取り事件では、恐怖におびえる被害者らを説得。威圧的に土地を奪う暴力団に、弁護団や県警などと連携し組織的に対抗した。この事例は県警と弁護士会などでつくる「県民暴研究会」の礎になった。
徹底した現場主義を貫き、「何度も現場に足を運び、証拠をかき集めた」。79(昭和54)年に故黒木博元知事が受託収賄罪で逮捕された事件では、受領書の紙質を巡って辛抱強く証拠を収集。一審から9年に及ぶ論争の末、控訴審で逆転無罪に導いた。
7人が犠牲になった80(同55)年の西都市・速川神社つり橋落下事故では、専門家と共に現場検証に明け暮れ、業務責任を問われた担当者の無罪を証明した。「3カ月家に帰らないこともあった。大変な苦労だったが今では懐かしい」
九州弁護士会連合会理事長など歴任した。受章に「今日までの事件が走馬灯のように浮かんでくる。大変光栄なこと」と柔和な笑みを浮かべた。趣味は「後進の育成」。宮崎市内で妻ふさ子さん(80)と2人暮らし。90歳。