多いときには約1200人の孤児を受け入れた児童福祉の父・石井十次。救済に向けて諦めない思いに「本当に素晴らしい」と感服し、深い敬愛の念を示す。節目となる第30回の受賞に、「職員や支援者、全ての人に対する賞だ」と言葉を選びながら感謝の思いを伝える。
両親が鳥取こども学園の前身・鳥取育児院の現場責任者だったこともあり、施設の子どもたちと一緒に育った。問題が起きると自分が親から真っ先に怒られ不満に思っていたが、施設の子どもで高校に進学できたのは自らを含め親がいる3人のみ。親のいない11人は経済的余裕がないため進学できず、申し訳なく思ったという。
1976(昭和51)年から、鳥取こども学園の児童指導員として勤務を始めた。当時、地元の中学校を卒業して就職した8人のうち、7人は同学園の生徒。施設利用者の高校進学率が低い現状に疑問を持ち、18歳までの養護保証を掲げ、全国の児童養護施設に先駆けて「高校全入運動」を始めた。さらに同学園生を対象にした「足ながおじさんの会」基金を設立し、大学・専門学校への進学支援も始めた。学園生だけでなく、鳥取県内の施設出身者にも対象を拡大。「学園だけでなく、県内の児童養護施設で取り組む必要があった」と振り返る。
全国児童養護施設協議会の元会長で、5月の同会長選に向け再び立候補を表明。国が「新しい社会的療育ビジョン」の中でうたう乳幼児の施設への「新規措置入所停止」については、「非現実的。里親と施設が協力すべき」と訴える。79歳。