本県で開催中の「国文祭・芸文祭みやざき2020」分野別プログラムとして宮崎市で開かれた「川柳の祭典」で、投稿句〈少しずつ忘れて朝食がうまい〉が最高賞となる文部科学大臣賞に選ばれた。運営スタッフとして当日も裏方で奔走していた中、疲れを吹き飛ばす吉報に「こんなに大きな賞を地元開催の大会で頂けるのは光栄」と、声を弾ませた。
受賞句は「忘れる」の題詠。人は誰でも少しずつ物事を忘れていくが、人の持っている生命力や希望を前向きに捉えて詠んだ。「朝は1日で一番好きな時間で、作品を推敲(すいこう)して完成させるのも朝にしている」。選評では「不安の中でも現実を見据え、川柳に大切な心の温かさや優しさがにじみでている」と評価された。
川柳の全国結社「番傘川柳本社」の同人。父重晴さん(故人)も詠んでいて、川柳は幼い時から身近な存在だった。自身も口語体で人間を中心に詠む川柳の魅力にはまった。
30代から本格的に取り組むようになり、多忙さで一時遠ざかっていたが十数年前から再び本腰を入れ、全国規模の大会に投句。2011年に全日本川柳仙台大会(全日本川柳協会主催)で入賞した。
今回の受賞に「仲間たちとの出会いを通じて成長できた。これからも仲間と一緒に楽しく、ずっと続けたい」と、前を見据える。
母の影響で10代から始めた華道は「草月流」師範の腕前で、流派の県支部長も務める。「人の思いや個性を大切にする点は川柳と生け花は同じ」。宮崎市在住。66歳。