中学1年の夏休み明け。「宿題をやってなくて、学校に行くのが面倒臭くて」。自宅のリビングで、テレビやパソコンを見て過ごす日々が始まった。
転機は18歳。母に「強制されたら学校に行く」とわれながら奇妙な提案を持ちかけた。「高校は出た方がいいだろうと焦ったのかも」と振り返る。
それからは「真面目で勉強もやってしまう」性格が存分に発揮された。通信制の高校を経て早稲田大法学部を3年で卒業、同大学法科大学院で学んで弁護士になった。
両親は弁護士だが、高校卒業までは「なるとも、ならないとも思ってなかった」。毎年キャンプに連れて行ってくれる普通の親だった。中学時代に両親が離婚後は母と姉2人と過ごしたが、就職先は父の法律事務所。「もともと両親が設立した事務所だったし、一択だった」と話す姿に、父も喜びを隠さない。
昨年1月の着任から交通事故被害者の損害賠償を求める案件など約70件を担当し、多忙な毎日を送る。「生きている意味ないな」と過ごした5年半。「あの日々がなければ今の自分はない。人生やれば何とかなる」と今なら言える。いい意味で放っておいてくれた家族に感謝しかない。
「引きこもりの立場でお金は使えない」という節制癖が残り、ネットで無料公開中の小説を読み、炊飯器でリゾットを作る。今年4月、県外で暮らす姉2人が同じ日にそれぞれ第3子を出産した。「私も3人欲しい。結婚してくれる人を探さなくては」と苦笑いする子ども好きの30歳。宮崎市在住。
【写真】松田和真さん