米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題を考察した著書「交差する辺野古 問いなおされる自治」が、有識者による選考委員会で「社会学の業績として秀作」と評価され、全会一致で「第47回藤田賞」に決まった。地方自治などに関する優れた著書や論文を顕彰してきた同賞受賞に「とにかくびっくりした。認めてもらえて報われた思い」と喜びを語る。
現在は明星大教授。宮崎市出身で、日向学院高卒業まで同市で過ごした。早稲田大大学院の頃に「米軍基地がある沖縄の暮らしを知りたい」との思いから現地に通い始め、現在まで約20年間、フィールドワークを継続。その成果を基に編み上げた本書で「辺野古で普通に暮らす人たちの決断や行動が、決して人ごとではないことに気付いてほしかった」。当事者意識を持つ人が増え、世論が変わっていく必要性を説く。
新富町の航空自衛隊新田原基地の行方も案ずる。「米軍との連携が深まり、軍事化が進んでいる」ように映るからで、日米共同訓練時の米兵宿泊問題、串間市での米軍ヘリ不時着事故、最新鋭ステルス戦闘機F35Bの配備計画などを注視。「宮崎も沖縄のようになっていくのではないか。沖縄が米軍にどう向き合い、対処しているのか、知っておいた方がいい」と提起する。
本県で生まれ育ったからこそ、政府に振り回される地方、という構図に気付き、研究上の視点を得た。「地方での経験が将来生きてくる、と宮崎の若い世代に伝えたい」。宮崎の焼酎を片手にくつろぐ。東京都在住、46歳。