大学院(博士後期課程)の学生を経済的に支援する国立研究開発法人・科学技術振興機構(JST)の「次世代研究者挑戦的研究プログラム」事業は、公募開始から締め切りまでがわずか3週間ほど。急ぎ準備した資料には、宮崎大で人材育成に30年以上取り組んできた「生きざまを落とし込んだ」と振り返る。
同プログラムは、経済的な不安から博士後期課程の進学率が全国的に減少傾向にあることから立案され、学生が研究に専念できるよう生活費、研究費を含む年間最大290万円を支給する。「奨学金制度があっても、貸し付けであることが多い。研究に集中できない上、負債を抱えて社会に出て行くのは気の毒だ」と危機感を強めていただけに、「何が何でも(採択を)取りに行かねばならない」と強い思いで臨んだ。
共同研究で渡米するたび、若い研究者を共に連れていき、最先端の研究に参加させ、育ててきた。その後大学教員になった学生もいる。「国は低下した科学技術力の向上のために、ようやく大学院生を生かそうと考えだしたところ。今の中高生を含む未来の研究者のため、夢のある話をしていくのが使命だと思う」。人材育成を研究者人生における永遠のテーマに据えている。
専門は応用生物化学。県産ブルーベリーの茎と葉から抽出した成分の研究では、新型コロナウイルスを無害化する抗ウイルス作用があることを研究チームで確認し、昨年12月に特許を出願した。晩酌の焼酎と趣味のソフトボールが気分転換の要。都城市出身で宮崎市在住。70歳。