県庁の職員生活を終え、大学客員教授として教壇に立つ傍ら「サクサクと読み解く地域経済の勘どころ」を宮崎市の鉱脈社から出版した。「あらゆる人々の暮らしを想像する」を信条に、都市との格差や人口減といった地方の課題に向き合う。県外からの講演依頼にも応えている。
京都大を1年留年して卒業後、生まれ育った県の採用試験に2回目の挑戦で合格。「覚悟も志もない若者でした」と振り返るように、仕事に身が入らず、司法試験の勉強をして現実逃避していたが、上司に叱られ心を入れ替えた。
若手時代、中小企業庁に出向し、全国の地場産業育成に関わったことがライフワークの原点だ。「違う釜の飯を食べ、宮崎にしかないものが見えた」。1次産業が鍵を握ると考え、マンゴーや地鶏を振興するための政策立案に携わった。
東国原英夫前知事には秘書広報課長として仕えた。テレビカメラの前で知事自らが特産品をPRする手法に違和感もあったが、職員の話をポケットサイズのノートに熱心にメモする姿に感銘を受けた。同じサイズのノートをすぐに購入。見聞きしたことを書きとめる習慣は今でも変わらない。
地方が生き残るには経済面でできる限り自給自足し、県外への資本流出を少なくすることが重要と説く。持論が「全国の課題解決に生かされるならうれしい」と話す。
週末は過疎が進む山奥の実家に帰り、野山の手入れをしながら地域の将来を思う。宮崎市に妻と2人暮らし。68歳。
【写真】 地域経済を説く本を出版した緒方哲(おがた・さとし)さん