商忘団設立時から続けているイベント「マリンあち~い音楽祭」(8月7日、日南市南郷町・南郷B&G海洋センター前広場)は今年、コロナ対策として野外開催を選んだ。「地元民に質の高い音楽を聴いてもらい、盛り上げたい」。その志は30年間続いてきた。
設立のきっかけは旧南郷町時代の1992年、年齢が一つ下の幼なじみ、故河野好博さんがある情報と提案を持ってきたこと。「南郷に95年、文化センター(南郷ハートフルセンター)ができる。その前に、イベント企画の組織をつくってはどうか」。二つ返事で引き受けた。
河野さんは自営業の傍ら音楽イベントのプロモートを実践。多くのミュージシャンと親交があり、商忘団設立の92年から音楽祭を始めた。初回は世界的ジャズピアニスト山下洋輔さんを招き、会場の南郷小体育館で多くの町民がプロの技に酔いしれた。
しかし、95年の同センターオープンの直前、河野さんは急逝。同センターでの音楽祭を見ることもなく旅立ったため、「志を継いでいきたい」と決意した。その後、集客のためものまねショーを行ったこともあったが、再びじっくり聴かせる音楽イベントに戻した。アーティストに対しては、自ら演奏会などに出向き出演交渉している。
音楽祭のほか「南蛮渡来みなとまつり」や東日本大震災の教訓を受け継ぐ「命の鼓動プロジェクト」も手掛ける。「河野さんの提案なしに商忘団はなかった。この思いを継ぎ、核になってくれる人に出てきてほしい」。同町出身、73歳。