マダニが媒介する人獣共通の感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」。致死率が2割と高い上に、有効な薬やワクチンがない危険な感染症の治療法開発を目指し、国の支援を受けて宮崎大に研究拠点を整備する新事業のリーダーを務める。「人だけでなく、ネコやイヌも今まさに犠牲になっている。救える命を守りたい」
神戸市出身。北海道の酪農学園大で獣医学を学び、国内外で”人類の敵”であるウイルス感染症と向き合ってきた。その一つ、SFTSとの出合いは宮崎大に赴任した2015年。感染者数が全国最多ながら、SFTSと特定する体制から後れを取っていた本県の現状に直面し、「地域に意義のある研究をしたい」と使命感を感じた。
17年には医師や行政と共に、SFTSの調査や啓発などを行う団体・宮崎ワンヘルス研究会も設立。名前に冠した「ワンヘルス」は、人の健康と動植物や環境の健全性を同時に保つ理念。SFTSと同じ人獣共通感染症である新型コロナウイルスの大流行により、世界的に重要性が高まっている考え方だ。
新事業では大阪大などとも連携し、40人を超す各分野の専門家を取りまとめ、「ワンヘルス」の観点からSFTS解明に挑む。それと同時に「医学や獣医学など分野を超えた連携体制の確立」も狙いの一つ。「コロナの次に、また新たな人獣共通感染症が来る。即応できる土壌をつくりたい」と先を見据える。
宮崎市在住で、趣味は40歳から始めたトライアスロン。最近は「小学生の長男とのサーフィンが楽しい」と笑う50歳。