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「日本刀制作技術」が県無形文化財に指定された刀匠 松葉景正(まつば・かげまさ)さん

2022年10月15日
 「刀鍛冶にとって地元の文化財に指定されることは一つの到達点であり、目標。40年間積み重ねてきたことが評価され、うれしくもあり誇りでもある」と目を細める。

 幼い頃から剣道や空手など武道に親しんだ。居合用の刀を求めていた24歳の時、師匠となる小林康宏氏(故人)に出会い、刀鍛冶の道に。「修業は大変だったが、刀の美しさに魂が持って行かれた」

 6年後の1989年に免許を取得し、故郷の日向市で独立。90年から日本美術刀剣保存協会主催の新作名刀展に出品を始め、2008年に最高賞を初受賞。11~14年に連続で最高賞を獲得し同年、無鑑査入りを果たした。「一生懸命、千本くらい刀を作って、ふと気付いたら日本一。追究してきた刀鍛冶道は正しかったと思った」と振り返る。

 明治維新や太平洋戦争の敗戦など度重なる危機を乗り越え今の時代に刀が残っていることを「単なる武器、兵器ではなく、魂に寄り添う美しさがあるから」と説明。「先人から今に伝わった刀を作る技術を後世にきちんと伝えていく。形だけではなく、日本刀の中にある武の心や哲学みたいなものも伝えていきたい」と語る。

 「自分の中で理想型」と話す南北朝時代の名工「備前長船長義」の再現に長年取り組む。「やりたいこと、試してみたいことがまだまだある。できればあと20年くらい、頑張ってみたい」と制作意欲が衰えることはない。

 本名・一路(いちろ)。鍛刀場を構える同市平岩の自宅に1人暮らし。63歳。

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