「日頃から切磋琢磨(せっさたくま)する肥育部会の仲間たちや、素晴らしい子牛を生産する繁殖農家らのおかげ」。若くして名誉ある賞を獲得し強調したのは、周囲への感謝だった。
小林市出身。高校卒業後、福岡県の専門学校に進むが「何をしたいのか分からなかった」と19歳で帰郷。乗り気ではなかったが、実家の肥育農家を手伝うことになった。
幼少期から餌やりなどの手伝いをしていたこともあり、次第にのめり込んでいく自分に気付いた。何とか利益を出そうと本などで学んだ知識を父幸成さん(68)に説明すると、「現場の牛から感じ取れ」と諭された。
負けず嫌いの性格に火が付き、毎日、朝昼晩と牛舎をくまなく歩き、牛の様子を観察。時には病気で死ぬこともあり、自分の技術のなさを痛感することも。牛にストレスをかけない飼養管理を目指し、JA職員らと共に改善を重ねてきた。
先月上旬、全国和牛能力共進会鹿児島大会肉牛の部で、父が最高賞・内閣総理大臣賞を2大会連続で勝ち取った。言葉より行動で手本を示す姿に「父に少しでも近づきたい」との思いを強くする。
約480頭を飼育。飼料価格の高騰、消費者ニーズの多様化などさまざまな課題はあるが、”日本一の宮崎牛”を生産できることに誇りを持ち、「全国、世界の方々に安心安全な牛肉を提供したい」と意気込む。
「おかえり」と出迎えてくれる子どもの笑顔が一日の疲れを癒やす。子育てや家事に加え、牛の世話も担う妻枝実さん(34)には頭が上がらない。同市南西方。39歳。