「正しい判断を行い、分かりやすく伝える」。就任会見で語った抱負は、30年にわたる裁判官人生で培ってきた率直な思いだ。スピーディーな審理や、創設から100年を迎えた調停制度の充実にも言及。「全ては紛争当事者のために」と力を込める。
司法修習生時代、「証拠による事実認定を通じ、人間心理の動きを追求したい」と裁判官を志した。大阪地裁を振り出しに、沖縄や高知県など各地で勤務し、主に民事を担当。当事者それぞれの言葉に耳を傾け、「双方の納得が得られる解決」に努めてきた。
東京地裁では、新型コロナの緊急事態宣言下に東京都が出した飲食店への営業時間短縮命令を、法定要件を満たさず「違法」と判断した。時短命令を巡る初判断として注目が集まる中、「国民の安全は当然ながら、公平さとは何か深く考えさせられた」と振り返る。
福井県出身で地方の高齢化問題などにも関心を寄せる。官公庁などがコンパクトにまとまっている地方都市の利点を生かし、「各機関と連携して、成年後見制度の円滑運用など小回りの利いた支援をさらに広げていければ」と意欲を見せる。
趣味は東京五輪で興味を持ったゴルフ観戦。本県で11月にあった女子プロゴルフ最終戦リコーカップを現地で観戦し「市街地からゴルフ場が近く、自分もしてみようかとひそかに思っている」とも。初の本県勤務に、「いろいろな場所を巡り、自分の中の白地図を埋めていくのが楽しみ」と笑みをこぼす。東京大法学部卒。宮崎市の官舎に妻と2人暮らし。60歳。