県聴覚障害者協会が製作し、31日から公開される映画「おわりなき聲(こえ)」の脚本・監督を務めた。「ろう者が声を上げないと、聞こえる人には分からないこともある。より良い社会に向けて両輪で動いていければ」との思いを映画に込めた。
ろう者の人権と生活を守るため、先人たちが積み上げてきた「ろう運動」が実り、近年は各自治体が相次いで手話言語条例を制定するなど、表面的には聞こえる人と平等の社会になってきた。しかし、ろう者と聴者にはさまざまな”壁”が今も残る。「例えば街中で聴者に話しかけられて、聞こえないことを伝えると『あっ、いいです』と話が終わることがある。聞こえる方が良いという考えは根強い」。
ろう者に囲まれて育ち、差別や偏見について見聞きしてきた。過去に映画製作に携わった経験もあり、大役を引き受けた。半年間の製作期間中、映画の趣旨に賛同して集まった約50人とは何度も意見をぶつけ合った。会社員としての仕事の傍ら、主役の2人とは複数回食事を共にし、昔のろう者が味わった苦しみや痛みを伝えた。みんなほぼ手弁当で撮影に臨んだが、誰もが良い作品にしたいと尽力した。「製作過程そのものが、ろう運動だった」
宮崎市での上映にとどまらず、全国各地で見てもらいたいと願う。「映画製作で結束力が高まった。声をかければ、すぐに集まってもらえるので2作目もあるかもしれない」と、笑顔を見せる。都城市で妻(43)と2~7歳の4人の子どもと暮らす。39歳。