あと1分、あと1秒でも早く到着できていれば―。救急隊員として活動する中、悔しい思いをすることがあった。要因の一つが救急車の安易な出動要請。その適正利用を学校教育で伝える取り組みを、県消防職員意見発表会で訴え、最優秀に輝いた。
救急出動件数は全国的に増加傾向だ。所属する宮崎市消防局管内(宮崎市、国富、綾町)は昨年、1万8684件と過去最高を更新。一方、「どこの病院に行けばいいか分からない」「救急車ならすぐ診てもらえる」といった、急を要しない119番も少なくないのが現状という。
「管内に救急車は10台しかない。人も救急車も限られた資源ということを知ってほしい」。助かるはずの命が助からない事態を招きかねず、抜本的な解決策として、学校での教育導入を提案した。
小学校では命の尊さや救急車の必要性を教え、中学校では命に関わる病気と症状に理解を深める。仕上げとなる高校では、緊急性の判定ができるレベルとして、心肺蘇生や止血、AED(自動体外式除細動器)利用にも対応できるようにする―。継続的な教育は救急車の適正利用だけでなく、有事の適切な初動にもつながると説く。
佐土原高を卒業後、「人の役に直接的に立ちたい」と2016年に同市消防局入り。消防隊、救助隊と経験を積み、現在は宮崎南消防署救急隊に所属。今後はより高度な処置が可能な救急救命士の資格取得を目指す。
非番の日は趣味の磯釣りで気晴らし。「自分で釣った魚は味も格別」。同市在住。25歳。