「犬バカと言われることが最大の名誉」。1986(昭和61)年から県警の嘱託警察犬審査員として警察犬の審査や訓練士の指導に尽力してきた。本年度の九州管区警察局長感謝状を県内で唯一受け、「時代に応じた警察犬を育てたい」と今後を見据える。
宮崎市出身。幼い頃から自宅でブルドッグやボクサー犬を飼っており、犬好きになったが「犬に関わる仕事に就くつもりはなかった」。転機は四十数年前。犬を5匹飼育するオランダの友人宅を訪ねると、無駄ぼえをする犬がいなかった。理由を聞くと「客人にはほえない。不審者にほえるのが犬だろ」という。犬が客にほえるのが当たり前の自国が恥ずかしくなり、「日本にもレベルの高い犬を増やしたい」と、訓練士を育てる審査員の道を歩むことを決めた。
日本警察犬協会の審査員に弟子入りし、経験を積んで審査員に登録された。その後も犬への理解を深めるため、年に5回程度は海外へ赴き繁殖や指導方法を学んだ。渡航費も全て自腹。一人前になるには15年以上かかるといわれている世界。「どれだけ熱意を持って犬と向き合い続けられるか。まさに犬バカじゃないと務まらない仕事」
後継者不足には危機感を募らせ、SNSを利用した情報発信にも力を入れる。
審査した訓練士からは、今でも度々連絡が来るという。「『捜査に大きく貢献した』などという報告を受けることが何よりもうれしい瞬間」と目を細める。日課は愛犬と散歩をすること。宮崎市に妻、長男夫婦と4人暮らし。78歳。