血がつながらないのに自分を懸命に育ててくれた天国の母、美保子さんへのあふれる思いと感謝の気持ちをつづった「日々を紡ぐ」(3月2日付)で本年度の「第34回宮日茶の間賞」特選に輝いた。
父の誕生日に合わせて、サプライズのプレゼントになればと初めて投稿した。「母がもし生きていたら受賞を喜んでくれるはず。でも、面と向かったら『ちっとばかりいい文を書けるようになったけど、調子に乗ったらいかん』と言われるかも」。手に持った母の写真を見つめ語り掛けるようにほほえんだ。
幼少時に実母と離れ、7歳の時から育ててくれたのが美保子さんだった。「生き抜くためのさまざまなことを教えてくれた」。特に支えになったのは「『書くことには光るものを持っている』と言われた」ことで、短大も国文学科に進んだ。ただ、卒業後はまとまった文章を書くのは年に1回程度、母への手紙だった。
美保子さんは病気のため、2年前の秋に他界。生前に数多くの手紙をもらったが、あまり返信できなかったのが心残りだった。ある時「母の写真を見たら『あんたいつ書くと?』と言われた気がして」ペンを取った。
”お涙ちょうだい”にはしたくないと、簡潔にありのままをつづったのが受賞作だった。今後の目標は「読み手が笑顔になれる文を書けるようになりたい」と、前を向く。
美保子さんは亡くなる年の春に宮日柳壇賞を受けた。「(母に続く受賞は)巡り合わせを感じる」。込み上げる涙に声を詰まらせた。宮崎市在住。49歳。