受賞作で取り上げた旧ジャニーズ事務所創業者の性加害問題。当初、社名を維持するとした事務所の方針に「それはないだろう」と怒りにも似た感情が込み上げ、思わずペンを握った。揺らぐ社屋を描き、問題に真摯(しんし)に向き合うよう訴えた。
3度目の最優秀賞。「描くことが生きがいだから」と、心の支えであり続けた漫画だけに感慨もひとしおだ。
小学1年の時、交通事故で顔や首に傷痕が残った。コンプレックスを感じ、引きこもりがちだった日々を救ってくれたのが漫画だった。「オバケのQ太郎」などのキャラクターを夢中で描いている時間だけは、何もかも忘れることができた。
本庄高を卒業後、都内の印刷会社に就職。配属先の工場では漫画雑誌も印刷しており、昼休みに発売前の作品を読んでは疲れを癒やした。5年ほどで帰郷し、県内の看板店に勤めた後、33歳で独立。以降は忙しさで漫画から遠ざかっていたが、50歳を過ぎてふと「生きた証しを残したい」と思い、宮日世相まんがが目に留まった。
2007年に初投稿作品が掲載されると、雑誌にイラストを投稿していた幼少期の思い出がよみがえった。「作品が載ると周りも喜んでくれるからうれしくて」。以来16年、毎月投稿を続ける。
好きな漫画家は「独特なタッチやコマ割りが魅力」という永島慎二。大事にしている東京時代にサインをもらった作品集をめくりながら、「いつかは絵を見ているだけで、ほっこり笑顔になれる作品を描きたいね」と顔をほころばせる。国富町森永に妻と2人暮らし。68歳。