クロマツにヤマモミジ…。自宅庭を埋め尽くすほどの盆栽約800鉢はいずれも愛情込めて育てた作品ばかり。憧れだった国風盆栽展(東京都)に初挑戦し、苗から育てた五葉松「瑞祥(ずいしょう)」で入賞した。「高額な盆栽を仕入れなくても評価されることが証明できた」と笑顔が弾ける。
こう話す背景には、盆栽人気が高まる一方で富裕層の外国人が仕上がった盆栽を高額で購入し展示会に出す現実があるという。時間の芸術ともいわれる盆栽の、年月かけて作り上げる魅力を訴える。
盆栽歴50年。きっかけは宮崎商業高教員だった29歳の時に本屋で目にした専門誌だった。当時は馬術が好きで国体選手になるほどだったが、諸事情で競技を断念。落胆していた時に誌面から伝わる鉢上の世界観に引かれた。専門店に通って学ぶと共に毎日の水やり、手入れを根気よく行い、全体の形を整えていく。地道な作業だが、応えるように少しずつ成長する盆栽にのめり込んでいった。
自作の盆栽を見た近所の子どもが放った「ここに行ったことがある」という感想が忘れられない。自然の風景と作品の世界が重なった「最高の褒め言葉」と喜ぶ。さらに「誰かが引き継ぐことで盆栽が何百年も生き続けることが願い」とロマンを語る。
日本盆栽協会宮崎支部副支部長で、地元愛好家の「あすなろ盆栽会」会長。三股町蓼池の水路沿いのシバザクラ植栽にも注力する。趣味は盆栽一筋。展示会などに軽トラックで作品を運んでくれる妻ユウ子さん(69)と同所に暮らす。79歳。