日本刀をさやから抜き、身を守るための技を武道化した「居合道」で、全日本剣道連盟最高位の8段に県内から33年ぶりに就いた。「うれしかったのは(合格の)番号を見た時だけ。審査の前夜は緊張で眠れなかったが、合格した当日も自分自身をどう高めていくか考えたら、もっと眠れなかった」と重みをかみしめる。
延岡市出身。子どもの頃に剣道を学んだ同市の「健武館道場」代表として居合道の指導にも当たる。流派は刀を横向きにして納める平納刀、声を出さないなどが特徴の「夢想神伝流(むそうしんでんりゅう)」。社会人になった1985(昭和60)年に同道場居合道教士の故佐藤英一さんに誘われ始めた。
居合道は見えない相手に対する剣さばき、体さばきの演武。「剣を抜いた時、相手が見えるように表現する。見せようとすると伝わらないので、どれだけ自分を追い込み感情移入できるか」と魅力を語る。
始めた頃は剣道と違い打った感触もない物足りなさや、形にとらわれすぎて面白みを感じていなかった。教本では学べない気迫の出し方など、指導者からの口伝の積み重ねで奥深さを感じ取っていった。「音楽で言えば音符通りに演奏しても魅了しないのと同じ。武道は独学では上達しない。指導者に恵まれた」と佐藤さんや、その後指導を受けた甲斐英二さんへ感謝する。
勤務先の延岡市消防本部で予防課長を務める。趣味は山に登り自然の写真を撮ること。剣道も別の道場で稽古を続け6段の腕前。長女は独立し、同市で妻、長男と3人暮らし。57歳。