公募展での最高賞は今回が初めて。「今まで描いてきた小品の中で自信作」という作品が評価され「続けているとご褒美がもらえるのかな」と控えめに笑う。
受賞作はアクリル「新世界 R6」(6号)。「コロナ禍やウクライナ侵攻など、混沌(こんとん)とした世界を表現したい」との思いで筆を取った。全体的な色調を暗く抑え、どこか不気味ささえ感じさせる作品だ。
ウクライナの人々が避難した製鉄所の煙突があるかと思えば、アンモナイトや貝の化石も。無機物と有機物、古代と現代が交錯する作品で、独自の世界観を描き切った。
高鍋町出身。宮崎大などで美術を学び、26歳から木城町の児童養護施設「石井記念友愛園」で勤務。多忙のため一時絵から離れていたが「自分の絵で人を力づけたい」という情熱は持ち続けていた。
施設で一緒に暮らす子どもの存在も背中を押した。「自分は子どもに『夢を持て』と言っている。だから頑張ろう」と一念発起。42歳から再び筆を取った。
大学の恩師の励ましも力になった。「絵の仲間と切磋琢磨(せっさたくま)する日々は充実している」と笑顔を見せる。
「新世界」というタイトルには「より良い世界になってほしい」という願いが込められている。「今後もこのテーマで描いていく」と目標は明確だ。「大学の恩師に『大器晩成型』と言われていた。これからも努力し続けたい」と謙虚に語る。
都城市の児童養護施設「石井記念有隣園」園長を務め、官舎に単身赴任。休日は宮崎市の自宅で制作に励む。67歳。