「頑張っている農業者を応援したい」との思いで入局し34年、職員約80人を束ねる県拠点のトップとして地元に戻った。「現場と農政をつなぐのが県拠点の役割。郷土に貢献したい」と力を込める。
小林市出身。実家は和牛繁殖農家で、夜遅くまで働く両親の姿が農政の道を志すきっかけになった。小林高から宮崎大農学部に進学し、農業関連の県内企業を経て1990年、九州農政局(本局・熊本市)に入った。
生産振興や担い手育成、技術普及などに携わり、高齢化や労働力不足、肥料や飼料の高騰など山積する課題と向き合ってきた。
県拠点は現場の声を施策に反映し、国の対策や支援を浸透させる役割を担う。「農業が元気になれば地域も活性化する。意見を聞きながら、どう解決できるか共に考えたい」
世界的な食料需給の変動や温暖化の進行などを背景に農業は転換期を迎えている。環境負荷低減を目指す国の「みどりの食料システム戦略」や、食料安全保障の確保を基本理念に据え6月に施行した改正食料・農業・農村基本法に対する県民の理解醸成にも力を入れる。
女性の地方参事官は本県初で、全国の地域拠点でも延べ9人。子育てをしながらキャリアを重ね、夫を熊本に残し、子ども2人を連れて名古屋に転勤した際には「逆単身と言われた」と笑う。その子どもたちも成人し、1人は畜産業に就いた。
農業の魅力は「自然との共生」。週末は父の農作業を手伝い汗を流す。信条は「前を向いて一歩でも進む」。宮崎市に単身赴任。59歳。