生まれた町で生きられなくなることを恐れた学生時代、必死に「男子」を演じ、死を考えるほど苦しんだ。「これから先の子には自分と同じ思いを絶対にさせない」と誓い、講演や相談を通じて多様な性の悩みに寄り添う活動に力を注ぐ。
日向市出身。幼少期から体の性に違和感を覚え、「女みたいだ」と嫌がらせを受けた。男女どちらの輪にも入れなくなり、昼休みは毎日トイレの個室で息を潜めて過ごした。
自分が何者か分からずにいた高校生の頃、図書館でトランスジェンダーに関する本を見つけ、「これだ」と確信した。ほっとすると同時に将来への不安や絶望感にも襲われた。周囲に打ち明けたのは成人してからだった。
講演活動を始めたのは20年前。ドラマの影響などで性同一性障害が認知され、教育現場から依頼を受ける機会も多かった。訪問先では、児童や生徒が性の悩みを誰にも言えずに追い詰められていた。
「悩んでいる子を救いたい」と昨秋、支援団体「ジェンダー・ダイバーシティ課」を設立。家庭や学校以外にも居場所をと、SNSを使った相談窓口も設けた。講演の聴講者は延べ2万人以上。内容は電子書籍にまとめ、理解を広げている。
35歳で性別適合手術を受け、「聞かれるたびに自分を殺していた」という性別は戸籍上も女性になった。
課題は多いが、スラックスの制服を着た女子生徒の姿に「やっと選べる時代になった」と変化を感じる。「選択を尊重し、ありのままの自分で生きられる社会になってほしい」。宮崎市在住、44歳。