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第66回宮日総合美術展でギャラリー賞を獲得した 渡邊 美咲(わたなべ・みさき)さん

2014年11月8日
 「彫刻を専門的に学んでいない自分が選ばれていいのだろうか」。第66回宮日総合美術展で、作品「くじら」が彫刻部門特選に輝いただけでなく、来場者の投票で決まるギャラリー賞にも選ばれた。普段制作しているのは絵画。彫刻は「大学の授業で取り組んだだけなので…」と恐縮気味だ。

 幼いころから自分の世界を自由に表現できる絵が好きで、時間があれば描いていた。中、高は美術部に所属。「美術を学べる大学に行きたい」と志し、高校時代は絵画教室にも通った。宮崎大では美術理論を専攻する。

 普段よく描く絵がクジラ。「動物の中で一番大きいスケール感、流線形で構成されている形の面白さが魅力」という。必修授業で彫刻を作ることになっても、テーマは迷わずクジラに。素材は自由と言われ、「技術の要る木彫では難しい」と、加工が比較的簡単な針金と人工芝を選んだ。

 完成したのは彫っても刻んでもいない造形物。「これは彫刻か」と疑問が浮かんだが、同大学の大野匠准教授(立体造形)は「空間と時間の中に存在を生み出すのが彫刻」と出品を後押し。審査員からは「彫刻の概念を拡張する可能性を秘めている」と評価され、来場者から多くの支持も得た。

 「認められようとは思わず、実験のつもりで出した」同展を通し、あらためて気付いたのは「表現とは自由なんだ」ということ。美術教師になる夢がかなったら、「子どもたちには技術だけでなく、工夫する楽しさを伝えたい」と語る。宮崎市内の実家で両親と妹の4人で暮らす。21歳。(文化部・成田和実)

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