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史上最年少でみやざき文学賞の小説部門一席となった 安冨 文乃(やすとみ・あやの)さん

2014年11月9日
 第17回みやざき文学賞の小説部門一席の栄誉に、史上最年少で輝いた。周囲から「おめでとう」と言われることで、ようやく実感が湧いてきた。中でも「両親が喜んでくれたのが一番うれしかった」と頬を緩める。

 受賞作「不発弾の朝」は、今年6月に宮崎市中心部の封鎖にまで発展した不発弾処理からヒントを得た。50年後に再び不発弾が発見され、主人公の高校生が校外実習で処理の見学に行くという設定。主人公は遺書まで残し自衛隊の車で現場へ向かうが、緊張感を感じながらも「映画みたいだ」という言葉を口にする。

 目の前の爆弾が爆発すれば死ぬと分かっていても、どこか実感が湧かない主人公。この姿には、実際の不発弾処理の記事を読み、「宮崎空襲を初めて知った」という作者自身が投影されている。戦争を知らない世代には、戦争や爆弾による死は日常とあまりにも懸け離れている。作品には反戦など批判じみた主張ではなく、「戦争をうまく想像できない」という若い世代の感性を込めた。

 中学生のころ、友人の間で流行したのを機に小説を書き始め、県外で学んだ大学生時代に小説家になりたいと意識した。帰郷して働きながら執筆を続け、過去の投稿作品には文芸雑誌の最終選考に残ったものもある。現在は初の長編に挑んでおり、「単に楽しいだけでなく、印象に残る作品を書きたい」と意気込む。

 学生時代に始めた茶道は「非日常の空間で、リフレッシュできる」と、今も教室に通う。同市内の実家で両親と3人暮らし。28歳。
(文化部・成田和実)

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