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都城市立美術館で開催中の「鱸利彦生誕120年展」担当学芸員 祝迫 眞澄(いわいざこ・ますみ)さん

2014年12月5日
 ことしは、宮崎市で育ち、全国的な絵画団体の創立メンバーとしても注目された画家鱸(すずき)利彦(1894~1993年)の生誕120年。都城市立美術館の学芸員になったばかりの昨年、特別展担当を任され、構成、準備に奔走してきた。会期は14日まで。「素朴で素直な美しさを目指した画家。ひたすら探求を続けた姿を知ってほしい」と願う。

 鱸は高島屋図案部で働く一方、画家として地道に歩み、県文化賞も受けている。遺族から同館に作品約80点の寄贈があり特別展が決まったが、他の有名画家のように参考文献が多く残るわけではない。「鑑賞者に身近に感じてもらうため、どうやって伝えようか」と考え、画家本人による新聞記事の切り抜き、個展の目録などを読み込んで整理することから始めた。

 高島屋時代のデザインは会社員ゆえに名前が残っておらず、特定できず苦労も。だが、国会図書館データベースや関連文献を粘り強く探すと本人の図案がいくつか判明。「足跡をたどるうち画家が生身の人間だったという当たり前のことを感じた。展覧会は作品を並べるだけではない」。実践の中で基本を再認識した。

 鹿児島市出身。中学時代、地元の美術館で学芸員の仕事を見て憧れ、東京芸術大、同大学大学院で美術史を専攻した。「美術の変遷を見ると、人は昔からさまざまな考え方をしてきたのだと分かる。これが正しいと一つに流れるのでなく、それでいいんだよって言ってくれるような自由さが好き」と美術にほれ込む。28歳。「休日も美術館巡りをしてます」とほほ笑んだ。(文化部次長・中川美香)

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