県内を中心にドメスティックバイオレンス(DV)・離婚といった家事事件のほか戦後補償、情報公開、労働問題など数多くの弁護団活動を経験してきた。4月1日に就任する日弁連副会長の一人として、人権問題の多くを担当。「少年の健全育成のためにも、審判を受ける少年に対して、全面的に国選付添人を付けることを国会に働きかける」。柔らかい語り口ながらも、強い決意をにじませた。
弁護士人生28年で印象に残るのは、第2次世界大戦後にBC級戦犯になった台湾出身の男性に対する補償を求めた裁判。男性は旧日本陸軍の軍属として捕虜の監視を担当していたが、軍に雇われた身分だったため恩給の対象外だった。
最高裁まで争った裁判は約10年にわたったが、男性の主張は認められなかった。補償を可能とする立法が存在しないことが理由の一つだ。この時の悔しさもあり、少年事件での国選付添人の実現に向け、立法府に対する働き掛けを重視したいと考えている。
北海道大法学部時代、恩師から「法は国民を守るためのもの」と学び、感銘を受けた。「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することが使命」とする弁護士法1条と併せて、さまざまな問題に真摯(しんし)に向き合う姿勢は、全国の弁護士を監督する立場になっても変わらない。
副会長を務める1年間は職責を全うするため、拠点としてきた宮崎市を離れる。「東京に住むのは司法修習以来。せっかくだから都会の生活も楽しみたい」と頬をゆるめた。山形県出身。57歳。
(報道部・吉田聡史)