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第22回石井十次賞を受賞した 石井哲夫(いしいてつお)さん

2013年4月22日
 「あの時代に考えもつかなかった実践をしたのが石井十次先生。何物にも替え難い名誉」と、尊敬する先人の名を冠した賞の喜びを率直に語った。

 現在は発達障害への支援や相談などを行う社会福祉法人・嬉泉(東京)の常務理事だが、子供との関わりは60年を優に超える。

 学生時代は東大で児童心理を学びながら、養護施設でアルバイトを経験した。「戦災孤児15人を朝起こし、食事をさせ、風呂の世話をする毎日だった」と振り返る。

 卒業後はその道の権威に誘われ特別支援教育の分野へ。日本社会事業大の教授などを歴任し、後進を育てる傍ら、国の審議会での委員などを務め、政策立案に携わった。

 「発達障害は学校に入れてもらえず、困っていた」と親同士が団結する中で、1967(昭和42)年に自閉症児親の会が発足し、日本自閉症協会へ発展。自身も2年前まで10年間、会長を務めた。

 現場での実践を通じて唱えるのは受容的交流理論。外部からモノを教え、訓練・矯正するのでなく「何になら興味を持つのか、分かるのか」と相手との関わり合いから、発達や生活の援助を目指す取り組みだ。「やっと最近、その流れが出てきた」と笑みを見せる。

 「社会は同じ気持ちや目的を持った人のまとまりで、人間関係を築くのが難しければ住みにくい世界。それを住みやすくするのが私の仕事。現場で最期をと思っている」と迷いはない。今夏に86歳を迎えるが、まだまだ精力的に駆け回る。川崎市宮前区に長女、孫と3世代で暮らす。(高鍋支局長・野辺忠幸)

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