柔らかい物腰ながら、日南市の基幹産業再生という「特命」に懸ける熱意が言葉の端々ににじむ。九州最年少で4月に就任した﨑田恭平市長の要請を受けて10日、市長が最重要課題とする産業振興に特化した特命副市長に就任した。
学生時代に中長距離選手として陸上部に所属。合宿先で走った自然豊かな森林に心打たれて東大農学部林学科へ進んだ。帰省先だった長野県では地元農家の苦労に直面し、「(生産者の)暮らしを支えたい」と使命感に燃えた。
農林水産省入省後は林野庁木材流通課国際専門官や九州森林管理局屋久島森林管理署長などを歴任するなど林業畑一筋。スギ丸太生産量日本一の本県にも足しげく通い、輸入材に対抗する施策の推進に取り組んだ。
北海道清水町や自治省(現総務省)財政局への出向も経験。同市の特別職では初めてのキャリア官僚として政策立案、独自の広い視野にも期待が掛かる。まずは都会の消費者ニーズを生産者が直接見聞きできる機会を創出。同市で盛んな漁業では、国際的な水産資源の管理に向け、地域から声を上げるつもり。
総括副市長との役割分担については「生え抜きの方々にはない発想が求められている。10年、20年後もこの町が生きていける構造の転換を模索する」と将来を見据える。
千葉県の自宅に妻を残し、同市に単身赴任。趣味はロードバイクだが、「仕事にも生かせるよう、地元の食材を使った料理にも挑戦し、それに合う焼酎も」と笑う。東京都港区出身。48歳。(日南支社・奈須貴芳)