1枚の似顔絵が有力な手がかりとなり、幾度も犯人逮捕につながった。21年間余り、捜査用似顔絵講師として県警に協力し、警察職員延べ989人を指導してきたことが評価されての受賞。3日の贈呈式では「私の持つ技術が世の中の役に立ったことがうれしい」と温和な笑顔で喜んだ。
二科展で何度も入選した経験を持つ水彩画家。小学校教諭をしていた41歳の時に、デッサンの先輩から似顔絵講師の後継者に推された。最初の講習では、ビシッと敬礼する受講生の姿に圧倒され「警察官に絵が描けるんだろうか」と戸惑いを覚えた。
そんな心配をよそに、受講生たちは一心不乱に鉛筆を走らせ、人体デッサンの基本を習得。「目や鼻、どこか一つでも似ていれば、本人を連想させる」と顔の特徴を強調して描くよう指導し、その成果は犯人逮捕という形で表れた。
ただ、意外なことに本人は「犯人が目の前にいないと描けない」らしく、「年齢や特徴を聞いただけで、犯人そっくりな似顔絵を描く警察官には感心する」と苦笑い。
教員を1年前倒しで退職した2010年、約1カ月半の欧州スケッチ旅行へ出掛け、宮崎空港で個展を開いた。宮崎市にアトリエもオープンさせ、人物、水彩画教室には県内各地から約40人が参加。「地域住民が気軽に集う憩いの場にしたい」と構想を練っている。
「何も口出しせず、自由にさせてもらっている」と妻への感謝を忘れない。同市小松台南町の自宅に妻、長男と3人暮らし。62歳。
(報道部・中西透)