教え子の手で3度宙に舞った。「厳しく指導してきた。最後まで逃げ出さず、よく耐えてきてくれた」。学生寮に住み込み、3年間寝食を共にしてきた。前回の優勝とは違う喜びを味わい、試合終了直後は涙を流した。
広島県出身。高陽東高では投手として活躍。日体大卒業後、同県内の高校監督を経て、28歳で延岡学園高の監督に就任した。その夏に宮崎大会を制し、甲子園でも1勝。しかし翌年の夏は準優勝で、昨夏は4強止まり。屈指の戦力を有する現チームも、公式戦は新人大会(昨年9月)で準優勝した後、なかなか結果を残せなかった。
転機は2月。駒大苫小牧高(北海道)の元監督で夏の全国大会2連覇を果たした香田誉士史さん(現・西部ガスコーチ)と会う機会があった。打力で全国制覇したイメージを持っていたが、香田さんは守備と走塁の重要性を繰り返し、「一生懸命やってるつもりだったが、基本を忘れていた」 信条の「守り勝つ野球」に、徹底して次の塁を狙う「機動力」を追加。送りバントや盗塁を絡めて好機を広げ、点に結びつける野球を指導してきた。今大会では、目指す野球を選手たちが十分に発揮。「今までやってきたことは間違っていなかった」と感慨に浸った。
昨年2月に結婚。延岡市内に自宅はあるが、学生寮暮らしは変わらず、ほとんど帰れない。「妻は、高校野球のテレビ中継をいつも録画してくれる。野球に興味がないはずなのに」と表情を崩した。同校保健体育科教諭、31歳。(運動部・坂元穂高)