江戸時代の延岡藩主、内藤家が残した約5万点に及ぶ文書や日記、絵図などが保管されている明治大博物館(東京都)。同館の学芸員として膨大な史料と向き合い、当時の政治状況や人々の暮らしぶりなどについて研究を深めている。
徳川家古参の家臣で譜代大名だった内藤家。譜代大名は領地の移動が頻繁に行われ、文書といった記録の保存状況は良くないとされる。そうした中でまとまって残る内藤家の古文書。「当時の大名と幕府との関係をうかがい知れる貴重な史料がそろう」と強調する。徳川氏に近い立場だからこそ伝わる、幕政の内幕が分かるものもある。
福岡県出身で、もともと日本史が好きだったという。九州大大学院生の時、法制史の研究で訪れた明治大で初めて内藤家の文書を目にし、残っている史料の多さに驚いた。2004年に「内藤家担当」として同大学に採用され、今もそれらと向き合う日々が続く。
文献で特に注目しているのが領地移動に関する記録。大まかな手順を記したものは比較的残っているが、荷物のまとめ方や費用の調達など細かい動きも記されている点が他と違うそうだ。「役人が苦労して書類をまとめる様子などは今の公務員やサラリーマンと同じ。武士の息遣いが伝わる」と、その魅力を語る。
研究は楽しい一方、史料の数が多く終わりが見えないのが大変という。今年は明治大に内藤家文書が譲渡され始めて50年の節目。「来年はこれまでより大きな企画展を開きたい」と意気込む。
東京都三鷹市在住。39歳。(文化部・橋本恭輔)