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複数曲楽しめるオルゴール開発 バイオベル(宮崎市)

2022年4月22日
 オルゴール制作のバイオベル(宮崎市、岩満國吉社長)は、ユニットを交換して複数の曲を楽しめる新製品を開発した。また、電動駆動にすることで、長時間好きな速度で聴ける装置も発売。新型コロナウイルス禍でアナログ回帰が進む中、レストランや福祉施設などさまざまな場面での活用が広がっている。

 「五感に響く生の楽器」を目指し、35年前から手作りのオルゴールを追究してきた岩満社長(80)。樹齢100年から千年超のクスや飫肥杉、屋久杉を5年以上乾燥させ、木の呼吸を妨げないよう無塗装で仕上げたフレーム(響体)、全音域の音色を響かせる構造、絶妙な調律技法―など独自の技術を確立させ、数々の商品を世に出してきた。

 今回新たに開発したのは、演奏データが埋め込まれた円筒(シリンダー)を交換することで異なる曲が楽しめる「マイストラディバイオリン」。同じ曲しか演奏できないオルゴールの常識を覆した世界でも珍しい商品だ。巻きねじを電動駆動に替えれば長時間の演奏も可能に。こうした技術に対し、複数の特許と商標、意匠権を取得している。

 これらに加え、この数年力を入れるのが円盤状のディスク式オルゴール。飲食店や美容サロンなどのBGMとして引き合いが強まっている。熊本市で自然食レストランを営む反後人美(たんごひとみ)さん(60)は「デジタル音に慣れている時代だからこそ癒やされる。築140年の古民家で自然食を食べてもらうゆったりとした時間に最適」と話す。

 高周波を発生し、認知症予防や音楽療法としての効能もあるとされるオルゴール。山口県宇部市の杉山和代さん(62)は運営するデイサービスなどで、認知症の高齢者が昔を思い出してぽろぽろと涙をこぼしたり、歌を口ずさんだりする姿を何度も目にしてきた。「まるで音の点滴をしているよう。アナログ音のすごさを感じる」とその効果を実感する日々だ。

 希少な木材を手作業で加工するため本格的な商品は20万円台から。樹齢を重ねたものほど高価になるが、「その分地球の記憶が刻まれている。振動の比重も高い」と岩満社長。「数々の経験や学びをもたらしてくれる仕事は人生そのもの。『心が動いたその隣』を経営理念に見えない音を追い求め、ようやく納得できる音が出せるようになった」

 車輪を回すと音を奏でる車のおもちゃなど小型商品は5千円から。販売は宮崎市のバイオベルで。(電話)0985(29)5611。

【写真】シリンダー(手前)を交換すれば複数の曲が楽しめる新製品「マイストラディバイオリン」を手にする岩満國吉社長。電動駆動(右奥)とつなげば長時間の演奏も可能になる=宮崎市のバイオベル

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