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とにかく立派な人

2022年11月23日
 「氷点」で知られ、生誕100年を迎えた小説家の故・三浦綾子さんに「小さな一歩から」というエッセー集がある。「一日10分誰かのために時間を割く」がモットー。人々との出会いを慈しむようにつづった。

 著名で忙しいにもかかわらず、北海道の自宅兼仕事場を訪問してくる見知らぬ人々、抗議や嫌がらせ電話にも丁寧に耳を傾け、さまざまな人生に向き合った。ある老婦人からは「命の恩人」であり「実に立派で親切な」ホテル社長の話を書くようにと勧められた。

 ところが「とにかく立派で親切」を繰り返すが具体的な例がない。社長の知人数人にも聞いたが、やはり同じように「彼ほど面倒見がよく尊敬できる人はいない」と話すばかり。三浦さんは当初がっかりしたが、ふと「常識を超えた大きな人格ではないか」とひらめいた。

 一つ聞けたのが、近所の子供らから慕われていた少年時代の逸話。親に買ってもらった空気銃を撃ったところ、たまたまスズメに命中。涙を流してスズメに謝り、丁寧にとむらった。三浦さんは「その優しさ、温かさが接した人々に染み渡り、言葉にしがたい思いとして残るのだろう」と推測する。

 確かに格別エピソードはないが「偉いなあ」と称賛できる人物に、往々にして出会う。誠実に仕事をこなし、他人への思いやりや高潔な人格がにじんでいる人。目立たなくても、よりよい社会に貢献しているそういう人々に頭が下がる。今日は勤労感謝の日。

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